無表情のピザ
第一章 ピザとの出会い
私が住んでいるところは田舎だったので、ピザが食べられるところもなく、外食をしない家で育った私はピザというものを知りませんでした。
小学生の時、国語の教科書でピザがでてきました。女の子とおじいさんが出てきてたような。ちょっと記憶が曖昧ですが。その話の中のピザはこの世のものとは思えないほどとても美味しそうで、私は絶対に食べてみたいと思い、母に訴えました。
母は、私の願いを聞き入れてくれ、ピザが食べられるところに連れて行ってくれました。教科書の中に出てきた名前は、ピザだったと思うのですが、私はピザに種類をある事を知らず、店員さんに注文を聞かれた時、メニューも見ずにものすごく堂々と”ピザお願いします”と答えました。母は動揺し、店員さんも驚き、なんとか私に分かるように説明してくれました。私は、食べないで店を出たくなるほど恥ずかしく、そのときのピザが美味しかったのかどうかも覚えてません。初めてピザを食べた経緯まではこんなに詳細に覚えているにもかかわらず....です。
第二章 タバスコとの出会い
それから数年後でしょうか。何度か外食でピザを食べたことはあったかもしれないのですが、初めてタバスコがピザと一緒に運ばれて来ました。何しろ我が家は外食を滅多にせず、洒落た調味料をおくような家庭ではなかったので、初のタバスコでした。私はコーヒーミルクのようなものだと思い、また、初めてのピザの恥ずかしい体験を思い出したこともあり、店員さんに聞くこともせず、一生懸命、一瓶使い切りました。そして、一口食べた瞬間、店員さんが水を持ってきてくれました。タバスコをかけているとき、少し離れたところで店員さんが何人かでこちらを見て話しているのは知っていたのですが、思春期の私は、あの子マナーがいいわね、みたいな誉め言葉をいってくれているものだと自意識過剰にも思っていました。ので、当然、初めてピザを食べたときと同じように、食べずに店を出てしまいたい気持ちでした。そして、その時、ピザを全部食べたのかどうかは.....覚えてません。
第三章 それからいろいろ出会いました。
目の前でピザ用ののこぎり歯のくるくる回る刃のナイフで切ってくれたとき、心の中で"おぉー!"と思ったのですが、表情に出さず、タバスコではなく、香辛料の入ったオイルが出されたとき"お洒落!!!!"と驚いた時も、表情に出さず、クリスピー生地のピザを初めて食べてにやけそうになった時も表情に出しませんでした。
これからも驚きの進化をとげても、きっと私は驚きを表情に出さず、これからも食べます。